酸性雨(さんせいう)と黄砂(こうさ)の関係?
 黄砂は中国黄土地方の細かな砂じんが風に吹き上げられて運ばれ、徐々に降下する現象です。
 黄砂のもとになっているのは黄河(こうが)流域のゴビ砂漠や黄土高原、タクラマカン砂漠一帯にある直径5〜50ミクロン(1ミクロン=1ミリの1000分の一)程度の微細(びさい)な砂が降り積もってできた地層、黄土層です。

 黄土高原では通常20〜60メートル、吹きだまりでは250メートルも黄土が堆積(たいせき)しているそうです。
 乾いた砂は、春になると、中国北西部に多発する低気圧の上昇気流によって5000〜10000メートルの上空まで巻き上げられ、偏西風(へんせいふう)にのって約4000キロ離れた日本にまで2、3日かけて飛んできます。春が近付くと、景色が黄色っぽくぼんやり見えることがありますね。「黄砂(こうさ)」と呼ばれる大気現象です。中国大陸から飛んで来た細かく黄色い砂が起こします。

「春の使者」ともいわれる黄砂。なぜ、この時期に日本にやって来るのでしょうか。

寒さで砂が渇き(かわき) 、偏西風が強まると飛んできます。
 黄砂の古里は中国北西部といわれています。世界地図を見ると、茶色に塗られた乾燥地が広がっています。
 黄河流域のゴビ砂漠や黄土高原、タクラマカン砂漠などがあり、広さは日本の約4倍。この一帯にある直径5〜50ミクロン(1ミクロンは、1ミリの1000分の1)のちりのような砂が、黄砂の正体とされています。

 「この細かい砂は、冬の間にカラカラに乾きます。寒い時、人の肌が乾燥するのと同じだそうです」

 乾いた砂は、春になると、中国北西部に多く発生する低気圧の上昇気流によって空高く巻き上げられます。
 高さは5千〜1万メートル。このあたりは偏西風という強い風が西から東に吹いています。この時期の風速は50メートル以上もあり、黄砂は風に乗って日本へ。東シナ海を超えて、約4千キロの距離を2、3日かけて旅してくるわけです。

 黄砂は砂が乾燥し、風が強まるなど、条件がそろう3〜5月が黄砂の本格的なシーズンです。

 実は、最近数年、黄砂の観測日が急激に増えています。
 黄砂の古里の中国大陸で、昔は草木があった土地が牧畜などにより荒れ地になり、砂漠や乾燥地の範囲が広がっているのが原因、と考えられています。


黄砂には二つの側面

汚染物質を一緒に運んでくる「悪い点」。
 大気中を漂い、時には洗濯物や車に降り注ぐ黄砂。日本でもやっかい者ですが、中国では深刻な被害をもたらしています。近年、三年計画で黄砂の実態を調べている独立行政法人 国立環境研究所の西川雅高主任研究員は 「中国で黄砂は『砂塵暴(さじんぼう)』と呼ばれ、台風並みの砂あらしとなって街を襲います」。年間の被害額は、農作物や家畜を中心に7,000億円に上るそうです。
 中国内陸部の黄土層の土壌中には、硝酸イオンがほとんど含まれていませんが、飛行途中で硝酸イオンを吸着。普通自動車70万台から排出される二酸化窒素に相当する量が日本に運ばれてきます。

黄砂と酸性雨との係わり

 汚染物質とは、空中を飛ぶ黄砂に付着する、酸性雨の原因になる車の排ガスや、火山ガスなどです。年間で車70万台が出す排ガスの量に相当します。一方で、黄砂は炭酸カルシウムを含み、酸性を和らげるアルカリ性。環境破壊の一因となる酸性雨を中和する効果もあるそうです。

大気をきれいにしてくれる「良い点」。
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 黄砂を環境問題の観点から評価すると、酸性雨緩和作用があることと海洋の栄養源となることが良い点として上げられます。炭酸カルシウムを含みアルカリ性である黄砂は、飛行途中で酸性雨の原因物質を吸着し、中和する効果があるともいわれています。量的には日本の平均的酸性雨(pH4.7)200mmを中和するアルカリ量が、毎年黄砂により供給されていると推計されているそうです。
 また、リンやカルシウム、鉄などの無機養分が付着しており、海に落ちると鉄分などの供給源となり、東シナ海では黄砂が供給する栄養分で植物プランクトンが増え、これをえさにして魚が育っているといわれています。

 黄砂の問題を、季節の現象としてとらえず、黄砂が「太陽の光を邪魔したり」、「地球温暖化」との係わりなど幅広く研究が行われます。