化学物質による環境リスク 

 私たちは、べんりな生活をするために、さまざまな化学物質を使ってきました。その結果、今私たちのまわりには、たくさんの化学物質(かがくぶっしつ)が存在しています。

 化学物質による環境リスクとは、こうした化学物質が、人の健康や、生態系にわるい影響(えいきょう)をおよぼすおそれのことをいいます。

 化学物質の環境リスクの大きさは、つぎの2つで決まります。
  1.有害性(ゆうがいせい)・・・化学物質の害(がい)の程度(ていど)
  2.暴露量(ばくろりょう)・・・こきゅうや飲食、皮膚(ひふ)にふれた時間など、
                  どれだけ化学物質にせっしたか
化学物質の環境リスク=化学物質の有害性×暴露量
 つまり、化学物質の有害性が小さくても、たくさんの量の化学物質を体の中にいれたり、長い間にわたって化学物質にふれていたりすれば、暴露量が大きいことになるので、健康や生態系にわるい影響をおよぼすことが考えられます。
 はんたいに、有害性が高くても、わずかな量しか体の中に入れていないのなら、健康や生態系にわるい影響が出る可能性は低くなります。

 このような化学物質の環境リスクを少なくするために、企業(きぎょう)や行政(ぎょうせい)は、化学物質の管理(かんり)にとりくんでいます。
企業 1.レスポンシブル・ケア活動(かつどう)
 化学物質をつくる、はこぶ、使う、すてる、のすべての段階(だんかい)で、環境や安全、健康にたいする対策を考えて行っています。

2.ISO14001(アイエスオーいちまんよんせんいち・・・環境マネジメントシステム)の導入(どうにゅう)
 企業が周辺の環境にかけている負担(ふたん)をへらすため、組織(そしき)全体で長い期間をかけて、環境管理(かんきょうかんり)をするシステムをはじめています。
行政

1.大気汚染防止法(たいきおせんぼうしほう)では、人の健康をそこなうおそれのある大気汚染物質(たいきおせんぶっしつ)を「有害大気汚染物質(ゆうがいたいきおせんぶっしつ)」とし、とくに対応がひつような19の物質について、汚染(おせん)じょうきょうを調査(ちょうさ)しています。
2.水がよごれることについても、22の物質を調査しています。

 さらに、2002年からは、PRTR(ぴーあーるてぃーあーる)制度(せいど)がはじまりました。
 PRTR制度というのは、 有害性のある化学物質が、どのようなところからどれくらい出されたか、あるいはごみにふくまれて事業所(じぎょうしょ)の外にはこび出されたか、というデータを、全国の事業者が把握(はあく)して報告(ほうこく)し、国がその結果をまとめて発表するしくみです。

PRTRホームページ(環境省環境保健部)

 PRTRによって、毎年どんな化学物質が、どこからどれだけ出されているかを、知ることができるようになります。
 これらの情報(じょうほう)は、発表のあとであれば、国へもとめて手に入れることができます。
 PRTR制度をきっかけに、私たちと企業、行政のそれぞれが、化学物質による環境リスクに関する正しい情報をもちあい、分からないことや自分の意見をせっきょくてきに表していくこと、これをリスク・コミュニケーションといいますが、このリスク・コミュニケーションがこれからますますひつようになります。