三重県環境学習情報センター

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2024.03.21

スキルアップ講座「世界を旅するトンボ ~ウスバキトンボ全国マーキング調査~」を実施しました

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 【主催】 三重県環境学習情報センター・三重県みどり共生推進課
 【日時】 2024(令和6)年3月16日(土) 13時15分から15時15分
 【場所】 三重県総合博物館 3階 レクチャールーム(津市)
 【講師】 市川 雄太 氏(愛知県立岡崎高等学校 教諭)
 【参加人数】 25人
 【担当】 環境学習推進員 東、西脇
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 世界の熱帯に広く分布し、日本に長距離移動を行うウスバキトンボは、生態学的に未解明の部分が非常に多いトンボです。この長距離移動の謎に挑む研究者から、長距離移動するウスバキトンボの調査方法や生態、自然環境との関わりを学ぶ講座を行いました。


 
 多くの種類のトンボは、幼虫時代を水中で生活し、羽化して成虫になると森林や草地などへ移動して、そこで過ごします。その後、性的に成熟して交尾や産卵ができるようになると、再び水辺へ戻ってきます。講師の市川さんは、一般的なトンボの生活史を説明した後、ウスバキトンボについて説明しました。ウスバキトンボも成虫になると移動しますが、何世代もかけて長距離を移動し、分布域は世界のトンボの中で最も広いと考えられています。
 日本にも、このウスバキトンボは移動してきます。みなさんも、赤トンボが群れて飛んでいると思ってみていることが多いのではないでしょうか。このトンボは南方から海を越えて日本に飛来し、世代を繰り返しながら北上します。卵が幼虫に孵化するまでの期間や、幼虫が成虫になるまでの期間が、他のトンボに比べて短いこともそれを可能にしているのでしょう。ただ、寒さに弱いため、日本では幼虫や卵で越冬することはできません。
 ウスバキトンボの長距離移動の謎を解明するには、大規模な調査をして、結果を積み上げていくしかありません。市川さんたちは、一般市民が参加する全国規模でのマーキング調査を行っています。マーキング調査(標識再捕獲調査)では、捕獲したウスバキトンボの翅(はね)に記号や番号をつけてデータを取ってから放します。そのトンボが再び捕獲されれば、移動などのデータが得られます。この調査では、日本全国でいろいろな人が調査するので、データの正確さや客観性、再捕獲の情報を得るために、デジタル画像やSNSなどが非常に役立っています。
 調査が始まって2年。まだまだ分からないことが多いのですが、マークしたトンボの再捕獲情報が得られたり、成虫の成熟度合いによる1日の活動の違いなど、少しずついろいろなことが分かってきました。全国規模での調査は大変ですが、今後もこの調査が続けられ、分かった結果をつなぎ合わせて、ウスバキトンボの長距離移動の謎、そして、自然環境との関わりが解明されるといいですね。
 


 
【参考】ウスバキトンボ全国マーキング調査(外部サイトへ移動します)
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【報告:東】

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